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〜医者はどこまで患者と向き合っているか?〜主治医はあなた【随時更新】

現代の医療のあり方に一石を投じ、これからの医療の可能性を模索する。
心身統合医療に力を注ぐ、医師・樋田和彦のメッセージ。

主治医はあなた

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キネシオロジーを使って
患者さんの身体に尋ねてみる。
その“場”こそ、医療の原点です。

■キネシオロジーと自律神経の関係

キネシオロジーは、アプライド・キネシオロジー(応用キネシオロジー)として約200種類以上もの方法があり、世界150カ国以上で何百万人もの人々に活用されているといわれます。これほど多くの国や人々に支持される理由のひとつとして、私たち医者にとって非常に興味深いものの、検査機器などで診断できない自律神経のバランスの変化を、いとも簡単にキネシオロジーで調べられることが挙げられます。

私のキネシオロジーは、有名な「ストレス学説」を柱に置いています。詳しくはchapter13に書いていますが、ストレスには「警戒期」「抵抗期」「疲労期」の3つの段階があり(私は抵抗期と疲労期の間に「混乱期」を加えて4つの段階としています)、第1段階の警戒期にはノルアドレナリン、抵抗期にはアドレナリン、最後の疲労期にはセロトニンに対して、それぞれ患者さんが反応することが分かっています。

反応する、というのは、筋反射が見られるということ。つまり、自律神経でいえば交感神経が優位となって緊張した状態にあるということです。

人間は、交感神経と副交感神経のバランスを振子のようにして取っているわけですが、心に何らかの問題やしこりを抱えていると、つねに交感神経が優位となって、本人さえも気づかない無意識の部分で、その問題に関係するキーワードに対して、身体が反応してしまう(筋反射)。そうした状態を緩和し、振子を元に戻すことが、治療の一環であると私は考えています。

ケーススタディ1

耳が聞こえなくなった女性

「耳がボーンとしてフタをしたみたい」という女性の患者さんが来院されました。「あちこちの病院にかかったのだけど、いっこうに良くならないし、聴力検査をしても異常がないといわれるのです」と悲しそうに訴えます。念のために聴力検査をしましたが、やはり異常はでません。そこでキネシオロジーを使って、彼女の身体に問いかけてみることにしました。

すると、ノルアドレナリンとアドレナリンに反応を示すわけです。つまり何かに対して、気がかりなことがあるということです。さらに詳しく調べていくと、職場で腹が立っていることがあることが分かりました。

「あなたは、職場のことでカリカリと怒っているね」
私がそう言うと、彼女は笑い出してこう言いました。
「どうしてそこまで分かるのですか?」
「あなたの身体が反応していますよ」

結局、彼女は職場の上司に対して、いろいろな不満を抱えていました。耳がボーンとする原因は耳にはなく、彼女と上司の関係性にあったのです。しかし、一般的な耳鼻科の診察では、そのようなことは決して聞き出せないはずです。耳がボーンとしていると聞けば、原因は不明でも薬を処方するしか方法がない。薬がダメというわけではありませんが、ケースによっては、キネシオロジーで原因をつきとめ、いち早く回復へと向かうことも少なくないのです。

では、なぜ耳に症状が出たのでしょう。全身で生きている中で個体に負荷が生ずると防御作用が起きるのではないでしょうか?耳を塞ぎたい気持ちとよく言いますが、耳に防御作用が起きて全身を守っていると考えると辻褄が合ってきます。つまり、耳の症状が必然的に起きていてそれで全身のバランスを整えていると考えられないでしょうか?

ケーススタディ2

血便で苦しんでいた女子中学生

2年もの間血便で苦しんでいた中学生の女の子がいました。トイレに行く度に出血するのですから、心身がまさにボロボロの状態でした。我々の学んできた医学は症状を対照にしていますから、当然止血剤と出血部位の確認が大切になり、全身管理にも気を配らねばなりません。そのことを彼女はずっとしてきましたが、状態は決してよくなっていません。

そこで、体全体にとって血便を悪と見る見方から、出血することは全身のバランスを調節する必要性があってのことかもしれないと誘導していきました。

すると、徐々に悲観的なマイナスエネルギーが減って余裕が見えてきました。
このネガティブなエネルギーこそが問題を引き起こしていたため、それを緩めることによって、次第に顔色が良くなりほっとした様子が見られるようになったのです。彼女は、体には生きるための最善のことをしているのだと気づきつつありました。そして、ついに血便を必要としない体になったのです。これらの症状と経過をキネシオロジーの技術で確認しながら、ストレスからの解放に努めました。

■医師と患者の間にかけがえのない“場”、それがキネシオロジー

キネシオロジーを使うとき、私は患者さんに対して全身を研ぎすまし、こういうことかな、と相手についていろいろ探りながら診ていきます。すると、自然に医師と患者の間にかけがえのない“場”が生まれます。その場こそが、治癒力を引き出すのです。時間はかかりますが、治療が非常に面白くなります。

キネシオロジーは通常の西洋医学ではなかなか受け入れてもらえないのですが、一歩踏み出して、こういったものを治療に活用すれば、医者も患者も喜ばしい結果が導けるのに、と思います。

何度も申し上げたかと思いますが、患部だけが生きているわけではありません。煙に当たりますと、目がしょぼしょぼして涙が出ますよね。涙を出すことで体が守られている。体に悪い不適切なものを食べれば嘔吐や下痢で防御し、症状が出尽くしたときに元に戻り健康状態を取戻します。風邪をひくべきときには風邪をひくことで全体としてバランスが取れていると言うことになります。ケーススタディ2でご紹介した女子中学生の出血も、必然性があってのことだと言えるのではないでしょうか。

このように、私の医療の方針は病状を悪として治療の対象とするのではなく、そうさせている条件に目を向けての対策を考えます。一方、ネガティブな患部を標的とし、診断名をつけて画一的に治療を行うだけの医学では、心身と環境などの全体に行き届く視野に立つことが難しいのではないかと思います。

「心が体を動かす」ことを身を持って体験するなかで、診療において大切なことは、安心、自信、信頼、感動を与え自然治癒力を高めることだと信じています。外から与える医療技術にそれほどの力はありません。本人の有り方次第で治癒力が上がるという本来の「人間性」と「生命の尊厳」をもととした医学と医療が求められていると感じています。

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