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〜医者はどこまで患者と向き合っているか?〜主治医はあなた【随時更新】

現代の医療のあり方に一石を投じ、これからの医療の可能性を模索する。
心身統合医療に力を注ぐ、医師・樋田和彦のメッセージ。

主治医はあなた

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病気は防御反応のひとつである。
「症状即療法」の考え方。

■ストレスは病気の原因、という誤解

かなり以前から、ストレスは病気の原因(敵)になるとされてきました。これについて調査をした、アメリカの健康心理学者 Kelly McGonigal の「How to make stress your friend(ストレスと上手につきあう方法)」がNHKテレビ番組で、放映されました。
3万人を対象に8年間の調査をした結果、ストレスによって死亡するリスクが43%増加したことが明らかになりました。ここまでは予測できたことです。しかし一方、リスクが高まるのは「ストレスが健康の害になると思っている人の場合」であり、もともとそう思っていない人のリスクは低いというデータも出ました。
次に、ストレスをかける実験を行ったところ、ストレスが有用と思った人の血管は収縮せず、喜びや勇気に満ちたときに近い状態となりました。つまり、ストレスは本人の捉え方次第で、うまくつきあえば体が活性化することが分かったのです。

ハーバード大学の実験では、心臓のドキドキは準備している状態であり、速い呼吸も脳にたっぷり酸素を送るというように、ストレスは体を活性化する有用なものと結論づけています。また、ストレスはオキシトシンを分泌されることも分かってきました。オキシトシンはハグしたときにでる愛情ホルモン(神経ホルモン)で、絆を強めるための行動を促します。さらに、心臓血管系をダメージから守り、心臓を健康にしてくれます。

■防御反応こそ健康の証

ここで、「症状即療法」の原理をお話しましょう。
煙草の煙でいっぱいの空間に入ると「煙たい。目が痛い」となります。体に合わないものを食べた時は「お腹が痛い。吐きそう。気分が悪い」あるいは下痢などの症状が出たりします。初めて人前で話さなければならない時は心臓の鼓動は高まり、血圧も上がります。さて、これらは病気でしょうか? もし、こうした異常な状態が長く続けば病気になりますが、人によって症状はさまざまですし、どの時点から病気と決めるかははっきりしません。短い時間の異変であれば、生体の防御反応といえます。
例えば、発熱は体内の殺菌・消毒と血液循環の促進および排毒の役割があり、リンパ球を増やして免疫力を高めるとされています。また、下痢・出血は体内毒素・不要物を排泄する生体防御機構のひとつです。このように生体には防御機構が休みなく働いており、反応こそが健康の証でもあります。

野生の動物は、怪我をすれば治るまで体を安静の状態を保ち、食欲がなければ食べません。しかし、人間の場合はどうでしょうか。動くべきか否か、食べるべきかどうか、ちまたの健康情報や損得に左右されることもあります。文明化が進めば進むほど、こうしたものに影響を受けやすくなります。
一方、子供は動物的本能に近い部分が残っています。赤ちゃんは食べたくないものは絶対にたべません。動きたいときは大人が止めようとしてもやめません。しかし、躾と称して人工化していくのです。

潰瘍性大腸炎の診断を受け、何年も経っているある患者さんは、内服薬による治療を受け、時々受けていた直腸の検査結果に過敏になり、頻回の下痢に悩まされていました。「下痢は体の自然の要求である」とポジティブに受け取れるようになってから、症状は自然に消えていきました。

野口晴哉著「風邪の効用」にはこう書かれています。
「風邪は誰も引くし、またいつもある。夏でも、冬でも、秋でも、春でも、どこかで誰かが引いている。他の病気のように季節があったり稀にしかないのと違って年中ある。しかし、稀に風邪を引かない人もいる。本当に丈夫でその生活が体に適っているか、そうでなければ適応感受性が鈍っているかであって、後者の場合、癌とか脳溢血とか、また心臓障害等になる傾向の人に多い。(中略)風邪をきっちり治せればもう千の病気に対処する力がある。いや、風邪を上手に経過させることができれば、まず難病を治せるといっていい」

■「あの時、先生にアトピーと言われなくてよかった」

現代はまさに情報化時代です。人々は情報によって洗脳されているといっても良いと思います。お茶の間では、病名や薬の名前をはじめ健康の話が飛び交っています。これらの裏付けを確かめることもなく、人々の顕在意識から潜在意識へ、そして無意識へと深く入り込んでいき、やがて信じ込みが生じます。

私の診療所で、2〜3歳のお子さんを持つお母さん方に「これはアトピーでしょうか?」と尋ねられることがたまにあります。そんな時は、医学的診断力よりも子供の将来を考えて「アトピーと似ていますが、違うと思いますよ」と私はお答えするようにしています。
すべてをスポンジのように吸収する幼い子供が「アトピー」という診断を受けると、ピアノや体操を習うと同様に、深く意識下に取り込まれていきます。他のアトピーの患者さんが治らなければ、自分のアトピーも治らないと深く信じてしまうかもしれません。ですから私はあえて「違う」と答えます。診断が正しいか否かの問題ではないと思っています。
何年も経って、お母さんに「あの時、アトピーと言われなくてよかった」と喜ばれたこともあります。

■花粉症へのネガティブな意識を変えるカード「花粉は友だち」「春は気持ち良い」

現代病ともいわれる花粉症。私の診療所にも、多くの患者さんがいらっしゃいます。花粉症の症状を患っている人たちに筋反射テストをすると、多くの人は「春と花粉」に対してネガティブな意識を持っていることが確認できます。たとえシーズンオフであっても、その反応は変わりません。つまり年中、「春は嫌い」「花粉は敵」といった意識を深く浸透させてしまっているのです。
これを何とか取り除くことはできないかと私なりに考え、ある時、ふと思いついたことがあります。「花粉は友だち」「春は気持ち良い」と大きく書いたカードを用意し、患者さんに渡したのです。
「これをご家庭の洗面台の鏡に貼ってください。歯磨きの際、カードを見るだけでいいのです」。
すると、かなりの人に「あのカード、効き目ありますよ」という言葉をいただきました。信じられないかもしれませんが、ネガティブな意識が、症状を増幅させているという裏付けになるのではないでしょうか。もし、この文章を読んでいる方が花粉症を患っているのであれば、ぜひ一度、試していただければと思います。カードに書く言葉は、自由に変えてもらってかまいませんが、春や花粉に対して、ポジティブな気持ちになれる言葉にすることが重要です。

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